名無しさん

映画「グッド・ネイバー」を見て

公開日: 2022-03-30 10:54:58 (4119文字)
更新日: 2022-03-30 10:54:38
映画感想

映画 グッド・ネイバー

映画「グッド・ネイバー」
2017年 1時間37分

原題「The Good Neighbor」
意味は、良き隣人

イーサンとショーンは、向かいの家に住んでいる変わり者の老人・ハロルドに幽霊ドッキリを仕掛けるのだが…。

目次

感想

ハロルドの家の地下室に興味を引かせるという流れになっているが、ラストは後味の悪い予想外の結末であった。(後味が悪いというのは、面白くない映画という意味ではない)

怪奇現象に動揺しないハロルド

ドアが勝手に開閉したり、突然音楽が流れても、あまり驚かないハロルド。驚かない理由は、そうなる心当たりがあるからで、それは病気で亡くなった奥さん。

人々は見たいものを見る

冒頭の「人々は見たいものを見る」という意味深なセリフ。

心理学でいう認知バイアスのことでしょうか。

ハロルドは、怪奇現象が奥さんの霊の仕業であると信じてしまいました。奥さんの霊だと信じてしまったのは、亡くなった奥さんがかつてこの家に住んでいたからという他にも、勝手に動くドアも、勝手に流れる音楽も、割れた窓ガラスも、それら全てが亡くなった奥さんとの思い出と重なっていたからです。ここがこの作品の良く出来ているところです。

実験のリーダーであるショーンについても、両親の不仲にハロルドが介入した過去をよろしく思っていない為に、ハロルドに関する悪い噂を信じてしまったのでしょう。

映画を見ている私自身も、ハロルドはきっと悪人で地下室に何か犯罪の証拠などがあるのではないかと想像してしまいましたが、それも同じ効果からかもしれません。

人間というのは、自分の都合のいいように物事を解釈したり、足りない部分の情報を勝手に想像して信じ込んでしまう傾向があるということ。

例えば、現実世界においてもゴミ屋敷の問題とかがあって、近所の人から嫌われたり変人扱いされているけど、もしかしたら、ハロルドと同じように辛い過去を引き摺っているだけで、本当はいい人かもしれない。

他にも、引っ越しおばさんの件。彼女は子供を亡くしてしまった頃から変わってしまったというネットの記事を読んだことがある。それが事実かどうかはわからないけど、もしそうだとしたら、引っ越しおばさんは気の毒に思う。特に、引っ越しおばさんの場合、ある一部のみを切り出して放送されているわけだから、それを見ている人は、それだけでおかしな人だと信じてしまうだろう。

地下室のドアの施錠

玄関や裏口のドアには鍵を掛けないのに、地下室のドアに鍵を掛けているのは、亡くなった奥さんの思い出の品が保管してあるからだったんですね。ハロルドの一番大切な物だったのでしょう。そして、地下室に保管していたのは、普段の生活でそれらを目にするのが辛かったからでしょう。

ベル

ベルは、病気の奥さんが声を出さなくてもハロルドを呼べるようにと、ハロルドがプレゼントしたものでした。

その思い出のベルがあるはずのない場所に置かれているのを見て、ハロルドは、亡くなった奥さんから呼ばれている、あるいは、奥さんが助けを求めていると思ったのだろう。

奥さんにベルをプレゼントした時に彼は「ベルを鳴らしてくれれば、すぐに駆けつけから」と語っていましたが、この言葉の重みを感じました。泣けてきます。

ハロルド

冒頭から序盤までは、変わり者で凶暴性を感じさせる映像になっていましたが、本当は優しい老人だったのですね。奥さんが亡くなった事と孤独が彼を変わり者にしてしまったのでしょう。変わり者というよりも、心を閉ざしてしまったという表現の方がいいだろう。

この作品を見て思ったのは、人を一面だけで判断してはいけないということです。これとは逆に、良い人だと思った人が、実は悪人だったというパターンもありますが…。

一般的に男と女では男の方がコミュニケーション能力が低いのだそうだ。ハロルドの場合も、おそらくは近所付き合いなどが苦手であった為に、近所の人から変わり者と呼ばれるような人物に変わってしまったのかもしれない。

ハロルドが「奥さんとのドアについてのエピソード」を思い出している時、ドアを直すよう訴えている奥さんに対して、ハロルドはソファに腰掛けたままじっと無視していました。この時は夫婦間でのちょっとした喧嘩だったのかもしれませんが、言葉を掛ける奥さんに対して、言葉を返せずに無視することしかできないハロルドはコミュニケーション能力が低いのかも、と想像しました。

それ以外にも、施設への入所を勧めてきた奥さんの友人に対しても、無視するという対応しかできませんでした。これもハロルドのコミュニケーション能力の低さを表しているなと感じました。

コミュニケーションにおいて、自分の気持ちを言葉で表現することは非常に重要だし、基本ですよね。

イーサンは「ハロルドが奥さんに暴力を振るったので、奥さんから逃げられた」と言っていたけど、あれはただの噂だったのだろう。イーサンの友人にしても「ハロルドが犬を毒殺した」とか言っていたけど、それらもデマだろう。

ハロルドを演じた「ジェームズ・カーン」さんですが、どこかで見たことがあるような気がしたので調べてみると、映画「ミザリー」で女性ファンから監禁される作家も演じておりました。ミザリーの時も踏んだり蹴ったりの役でしたが、この作品でも同じでしたね。

音楽の怪奇現象の後、地下室に籠っていたハロルド

音楽の怪奇現象の後、ハロルドは地下室で7時間も籠っていました。音楽が勝手に流れてきた時に、ハロルドは奥さんとの音楽にまつわるエピソードを思い出しました。それは夜中の3時で奥さんは音楽を聞きながらお酒で酔っていた。それはたぶん、自身の病気か入院することの悲しい気持ちを紛らわす為だったと想像しました。

ハロルドが怪奇現象である音楽をそのまま放置して去ったのは、奥さんの霊を自由にさせてあげようとした優しさです。そして地下室に籠ったのは、奥さんの霊を慰めるとか、一緒に居てあげようという気持ちからでしょう。

鑑賞後の後味の悪さ

ラストでハロルドが銃で自殺し、全てが明らかになったが、後味の悪さが残ります。しかも、イーサンとショーンは、2年間の保護観察と500時間の地域奉仕という軽い刑。ふざけた少年による遊びと、ハロルドの命という対比にやり切れない気持ちになる。

イーサン

何処にでもいるようなイタズラ好きの少年といった感じだったが、最後はとんでもない過ちを犯してしまった。イタズラはイタズラでは済まされない。

最初は隠しカメラで監視する側だったけど、最後は報道カメラを向けられる側になった。ラストで思ったのは、イーサンというのがとんでもないクソだった。

報道カメラを向けられている時は、戸惑っているような表情だったが、最後の瞬間、少し表情が緩んだというか、微笑んだようにも見えたのだが、これはなぜか?もしかして、世間の注目を集めたことに対する、してやったり、という気持ちなのか??

イーサンはこの実験をただの実験というだけではなく、ハロルドへの逆恨みの復讐という意味もあったかもしれない。それは、かつてイーサンの両親の喧嘩にハロルドが介入し、警察沙汰になったからで、その際のハロルドの証言により、父親が拘留され、その後に両親が離婚になってしまったからだ。

2度は見ない

何回も見てしまう映画はあるけど、残念ながらこの作品は二度見ることはないかも。なぜなら、ストーリー以外に見所がないから。

ダメだったところ

わからなかったところ

イーサンの部屋でショーンは何を見たのか?

イーサンが自室で寝ている時に、ショーンはイーサンのパソコンからネット閲覧履歴などを見ていた。その時に、ショーンが意味深な表情になったが、いったい何を見てしまったのだ??

イーサンは父親が音信不通だとショーンに語っていたが、その音信不通であるはずの父親とイーサンがメールで連絡を取り合っていることを知ったのか?(おそらくそうだろう)

ハロルドが斧でドアを破壊したのはなぜか?

本当は温厚なはずのハロルドがドアを斧で破壊したのはなぜか?

奥さんの霊がドアのガタツキを直せとわがままを言っていると思い、うるさい!との思いでドアを破壊したのか?

あるいは、この時はまだ奥さんの霊であるかもしれないと感じつつも、まだ疑っている気持ちもあって、頭が混乱していたからあのような行動に出た?

ハロルドはなぜ無施錠にしているのか?

ハロルドは玄関も裏口も無施錠にしているが、これはなぜか?

生前の奥さんが無施錠にするのが習慣?だったので、その習慣を引き継いでいるのだろうか?

地下室のドアに鍵を掛けなかった理由

地下室のドアの鍵について、いつもは施錠しているのに、最後の方は無施錠になりました。これはなぜでしょうか?

複数の怪奇現象が奥さんの霊の仕業であると信じ、地下室に居るであろう奥さんの霊が自由に出入りできるようにと無施錠にしたのだろうか?

それともたまたま施錠を忘れた?地下室からハロルドが出てくる際に何かの作業をしていたのかゴム手袋を嵌めていました。だから、鍵を掛けるのを忘れてしまったのか?

イーサンはなぜ鈴を持ち出したのか?

イーサンが地下室に忍び込んだ時、誤って「鈴」を鳴らしてしまった。あわてて地下室を脱出するイーサンだが、なぜ鈴を一緒に持ち出したのか?ハロルドが目覚めてしまった為に慌てて地下室を出たので、思わず一緒に持ってきてしまったのか?

そして、なぜハロルドの目に付くところにベルを置いたのか?地下室のドアに鍵を引っ掛ける為に一旦ベルを置いたが、ハロルドが接近してきたからそのままベルを放置せざるを得なかった?

これもこの作品でよくできているところです。


ユーザーの設定により、コメントの書き込みはできません。

関連する投稿
#映画感想
1,461文字
1,846文字
5,103文字
1,381文字
3,105文字
3,026文字
5,255文字
3,926文字
3,488文字
2,330文字
6,425文字
6,380文字
1,804文字
10,340文字
3,617文字