名無しさん

映画「残酷で異常」を見て

公開日: 2022-03-28 07:43:13 (3488文字)
更新日: 2022-03-28 07:42:02
映画感想

映画 残酷で異常

映画「残酷で異常」
2014年 1時間31分

原題「Cruel and Unusual」
自動翻訳すると「残酷で異常な」「残酷で異常なこと」

謎の施設に迷い込んだエドガーは、妻を殺した瞬間を繰り返し追体験させられる。やがて、自身が犯した過ちの経緯が明らかになり、エドガーはある行動に出る…。

目次

感想

エンドロールで安らかな気持ちになり、その余韻が残りました。

サスペンス・ホラーではなく、ファンタジー

アマゾン プライムビデオでは、サスペンス・ホラーに分類されている。前半はサスペンスっぽく徐々に謎が解明されていくという展開だけど、見終えた後はファンタジーだと思った。

反省と罰

施設では、自身の過ちを永遠に追体験させることで反省と更生を目指すというプログラムになっているようですが、それは同時に辛い記憶を再体験するということでもあるので、罪に対する「罰」でもある。

しかし「罪」を認めて受け入れることで、精神的な苦痛からはある程度開放されるようだ。これは現実の世界でも同じかもしれない。

罪は取り消せないが、苦しみは減らすことができるというところが救いでしょうか。

更生した後に転生するのか?

殺人や自殺をした者が死ぬと、施設に収容されて過ちの追体験と反省の日々を永遠と繰り返されることになるわけですが、それでは、なぜ反省をさせられるでしょうか?

反省というのは「同じ過ちを再び犯さないようにするための行為」であり、つまりその後に未来があるということです。

ということは、施設に収容された彼らも、いつの日か別の誰かに生まれ変わるのでしょうか?もし、転生することなく、永遠に反省をし続けなければならないとしたら、それは何の為なのでしょうか?

悪いことをしたことに対する絶対に許されないペナルティであるならば、彼らそのものを消してしまえばそれでおしまいのような気がします。(例えば、死刑のように)

辛い記憶をループして追体験させられるのはペナルティかもしれませんが、一方で、転生に備えた準備でもあるのかな?なんてことを想像しました。

7734号室と天井のハッチ

この部屋の天井には、映画「キューブ」を連想させる奇妙な形のハッチが付いている。このハッチから脱出したエドガーは、メイロン、ゴーガン、そしてエドガーの兄弟と一体化して、自分自身がどう思われていたのかを知った。

天井のハッチは、別の人物からの視点で追体験が可能になるハッチであり、それは、ある程度心の準備ができた者だけが出ることを許されるハッチなのだろうか?(テレビの中の男が、エドガーに対して「まだ準備ができていない」と言っていたので)

別の人物からの視点で追体験ができるということは、その人物が自分のことをどう思っていたのかを知ることができるので、反省する為には宜しいような気がします。

しかし、ハッチから出ることを阻止しようとしたということは、現段階ではハッチからは出てはいけないということですよね。それはなぜなのかを考えると、例えば、ハッチを出れば簡単に他人の気持ちを知ることができるが、そうではなく、まずは自分の頭で相手の気持ちを考えたり、想像したり、気付く事のできる人間になりなさい…ということですかね。

テレビの中の男が言っていた「まだ準備ができていない」とは、今のエドガーは、メイロンやゴーガンの気持ちをまだ理解できていない、まだまだ未熟である、という意味だったのかな。

そして、追体験を続けながら人間(魂?)を磨いていって、ある程度のレベルに達すると、天井のハッチから出ることを許され、人生をやり直すことができるとか??(別の人物と同一化した時に、過ちを阻止することができそうな気がする)

そう考えると、地下であるハッチの下が地獄で、ハッチの上である地上は天国(現実の世界)とも想像できます。

しかし、天井のハッチにはいろいろと疑問が残る。

例えば、なぜ、壁に取り付けられたドアではなく、天井のハッチなのでしょうか?簡単に出られないようにするため?でも、テレビの中の人の力を使えば脱出を阻止することができたはずだし…。とはいえ、エドガーは脱出できてしまったけど…。

それとも、謎のハッチは観客動員数を増やす為だけの「単なるデザインに過ぎない」ということでしょうかね?

子供を溺死させた男と両親を殺した学生は死んだのか?

施設にいる人は、殺人か自殺をした人で、かつ、その後に死んだ人。

ということは、子供を溺死させた男と両親を殺した学生も、罪を犯した後に死んだということになる。例えば、死刑になったとかだろうか??

エドガーの罪

エドガーはメイロンを束縛し、メイロンの子供・ゴーガンをメイロンから引き離そうとした。しかし、それらはメイロンを失いたくないという彼の弱さからのものであり、本当は、心の底からメイロンを愛していた。

そして、最後は命を掛けて彼女を救ったわけだ。命を掛けてメイロンを守ったエドガーの行動には心を打たれる。

しかし、そもそも、彼がメイロンを束縛していなければ、全てが丸く収まっていたはず。そう考えると、エドガーの自信の無さというか弱さが残念でならない。

エドガーの罪は自分を信じることができなかった、あるいは、自信が持てなかったということか。

また、それは他の収容者も同じかもしれない?

ラストでのドリスのタトゥー

エドガーに救われてドリスは死なずに済んだ。しかし、ラストで老婆になったドリスの手首のタトゥーは消えていなかった。しかも「(それが)重すぎたとしても(君を愛し続ける)」というエドガーの最後の言葉を覚えていた。

つまり、歴史は変わったが、自殺をしたという罪は永遠に消えないということか。ドリスは人生をやり直せたとはいえ、過去の過ちは消えておらず、その罪を背負ったまま生きてきたってことか。

グループの中でお互いに助け合えば、みんな人生をやり直せるんじゃね??

自分で自分の過ちを取り消すことはできないようだが、別の施設収容者の助けによって過ちの瞬間を変えることはできるらしい。

だとすると、二人一組になって同じドアに入り、一方が一方の殺人や自殺を止めれば、過去を変えて施設から逃れられるということになる。

しかし…

でも、この設定だと、何か変。

殺人や自殺というのは、命を奪う行為であり、失った命を取り戻すことは絶対にできない。だからこそ、命は尊く、殺人は重い罪なのではないか?

しかし、死んだのにやり直しがでできるというのでは矛盾してしまうのではないか?死んだのに人生をやり直せるのであれば、命の重さが軽くなってはしまわないか??

ラストのエドガーが女っぽくなった?

ラストシーンでのエドガーの椅子の座り方や歩く仕草などが女性っぽく見えたのですが、それは私だけですかね??

それとも、メイロンとドリスを施設に収容されないようにしてあげたという満足感のような気持ちで満たされていたのが、ラストでのあの表情だったのでしょうか?

ラストでエドガーは自殺したので、その罪からは逃れられないが、苦しみを味わうことはなかった。それは利他的な行動をしたことによる減刑みたいなものですかね?

エドガーの自己犠牲の行動に心を打たれた

脳科学者の中野信子さんの本によると、人間は社会を構成して生きる動物であり、利他的な行動を取ると幸せホルモンが分泌されて、幸福を感じることができるのだそうです。これは脳がそういった構造・仕組みになっているわけです。

エドガーの自己犠牲による行動には心を打たれましたが、それはエドガーによる究極の利他的な行動に触れたからだと思いました。

ラストで安らかな表情をしていたエドガーは、メイロンとドリスを救ったことによる幸福感に包まれていたのかもしれません。

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