映画「本当の目的」を見て
更新日: 2022-04-27 22:47:10
映画「本当の目的」
2015年 1時間29分
原題「Three Days In September」
意味は「9月のある3日間」
マケドニア/コソボ 合作
殺人で逃亡中のマリカはその道中でヤナという女性と知り合い、半ば強引に彼女の帰郷先まで付いていくことに――。一方で、ヤナの帰郷には、ある目的があった…。
感想
双子の姉妹であるヤナとクリスティナが入れ替わっていたり、マリカがクリスティナに成りすまして逃亡するという仕掛けが用意されているのだが、あっと驚くというほどではなかった。(だからといって、つまらなかったというわけではない)
弱者が復讐を果たすという展開ではあるが、それで気持ちが晴れるということはなかった。なぜなら、復讐をしても立場が逆転するわけではないから。
作品全体が静かな雰囲気になっているのは、そういったことを表現しているのかもしれない。
マリカはなぜ途中下車したのか?
列車のシーンでマリカは母親のところに行くと言っていたが、ヤナ(クリスティナ)の後を追いかけるように途中下車をした。
ヤナ(クリスティナ)は列車内から立ち去る際に、眠っていたマリカに自分のカーディガンを掛けてあげました。
マリカは逃亡中であり、不安な気持ちや絶望感でいっぱいだったかもしれない。
そんな時にヤナ(クリスティナ)の優しさに引かれて思わず途中下車してしまったという流れだろうか。お礼もしたかったというのもあるでしょうし。
良い1日かどうかは日が暮れるまで分からんよ
村に帰って来たヤナ(クリスティナ)がスーパーに寄った際、店先に座っていた老人が「良い1日かどうかは日が暮れるまで分からんよ」と語っていましたが、これを言い換えれば「良い人生かどうかは人生が終わるまで分からない」という意味でもあるのかな、と思いました。
村はなぜ男ばかりなのか?
村に男しかいない理由というのは、村には女性向きの仕事が無いので都会に出て行ってしまうからだろうか?
男は林業とか農業など肉体労働の仕事で生活をしているのかもしれない。
男女の差を感じる。
なぜヤナに成りすましたのか?
クリスティナは、なぜヤナに成りすましていたのだろうか?
ヤナが復讐をしたということにして、自分が疑われないようにする為の工作だったのだろうか?
しかし、ヤナは昏睡状態のまま亡くなっているはずなので、警察が調べればすぐにバレてしまうはず。
そう考えると、アリバイ工作の為とは考えにくい。
アリバイの為ではないとすると、ヤナのことを思ってのことだろうか?
つまり、ガンツのせいで昏睡状態にさせられたヤナの悔しさを汲み取り、ヤナ自身に復讐をさせてあげたいという気持ち。
ヤナに代わってクリスティナが復讐したというのではなく「自分自身がヤナとなり、ヤナに復讐をさせてあげた」ということだろうか?
それだと、レイプの復讐というより昏睡状態にさせられたことに対する復讐の気持ちの方が大きいということになる。
そういうことだろうか??
取り憑かれてしまうの…
ヤナ(クリスティナ)とマリカがスープを飲んでいるシーンで、ヤナは以下のような言葉を残している。
「殺しの衝動を感じる人間もいる」「一度やったらまたやりたくなる」「取り憑かれてしまうの…」「命を奪って終わらせる…」「そっち側の人間になる」
これらの言葉は、ガンツへの復讐の決意を表しているのかな、と思いました。
また「一度やったらまたやりたくなる」と言うのは、ヤナの延命治療を中止したクリスティナにとって「それは殺したとも言える」という意味でもあり、辛さでもあるのだろう。
延命治療を中止したことがガンツへの復讐を決断させたのだろうか。
物語の舞台はどこなのか?
スープを飲むシーンでマリカは母親がシュティップに住んでいると語りました。
また、ヤナ(クリスティナ)の家を訪ねてきたガンツはマリカに「スコピエで働いているのか?」と質問していました。
ガンツが警察署でマリカの手配書をヤナ(クリスティナ)に見せた時「マリカはスコピエで有名な売春婦」と語っていた。
シュティップとスコピエで検索してみると、どちらも「北マケドニア」の地名と出た。
ラストでマリカが国境を超える時、ゲートに北マケドニアの国旗が掲げられていました。
北マケドニアの警察車両を画像検索してみると、ガンツのパトカーの横に書かれている文字と同じ言葉が書かれているので、この物語の舞台はどうやら北マケドニアで間違いなさそうだ。
湖のほとりでなぜヤナは不機嫌になったのか?
湖のほとりで「明日、家を出ていく」と語るマリカに対して、ヤナ(クリスティナ)は気を悪くしたようだった。
マリカが殺人犯であることを知った時は、出ていくようにと言っていたヤナ(クリスティナ)だが、マリカがいざ出ていくと言うと、逆に拒否反応してしまったのだろうか?
もっと頼って欲しい、という気持ちになったのだろうか?
アンカ叔母さん
森の奥で一人で暮らしているようだけど、だからといって寂しそうという感じはしない。
雨漏りするような住まいかもしれないけど、お酒とか飲みながら楽しく暮らしているのかも。
強さも優しさも持ち合わせているような印象で、私もあんな感じで強く生きていきたい。
アンカ叔母さんは真相を知っているのか?
アンカ叔母さんは「ガンツと遊ばせるべきじゃなかったねぇ」とマリカに語っていたし「呪われた血筋」「何も明るみには出なかったが少女の一人は昏睡状態」とも語った。そしてガンツのことを快く思ってない様子だった。
ヤナ(クリスティナ)とガンツの秘密は当人以外は知らないはずだが、アンカ叔母さんは真相を見抜いているのかもしれない。そんな気がした。
ヤナの父親ヨセフが自殺した理由は何か?
ヤナの父親であるヨセフが口利きをしてガンツを警察学校に入学させてあげたとのことだから、ガンツがクリスティナをレイプしたことをヨセフは知らないはず。
なので、レイプの件は自殺とは関係ないだろう。
アンカ叔母さんによると、ヤナが昏睡状態になった直後からヨセフは自宅には戻らずにアンカ叔母さんの家に住むようになったと語っていた。
そして酒に溺れて自殺したとのこと。
まず、ヤナが昏睡状態になったからといって自宅に戻らずにアンカ叔母さんの家に住むようになったというのがわからない。
なぜ、自宅に戻らないのだ??
そして、自殺の動機はヤナが昏睡状態になったことと関係があるのだろうか?
しかし、ヤナが昏睡状態になって辛いとはいえ、残されたクリスティナのためにも頑張って生きなければならないはずだ。
そう考えると、ヤナが昏睡状態になったことが原因で自殺したというのも何だかしっくりこない。
では、事業のことだろうか?
雨の降る晩にガンツが父親と話している時「ヤナの家もホテルも俺らの金で建てた」と言いました。
俺らの金とは自治体の金のようで「それが今ではあいつらのものになってる」とも語りました。
つまり、公金で建てた自宅とホテルを個人の財産にしてしまったのでしょうか?
そして、そのことが問題になった?ので自殺に追い込まれてしまったのでしょうか?
ヤナ(クリスティナ)は自身の父親を「誠実な人だった」と語ると同時に「少なくても私はそういう印象を持ってる」とも語りました。
逆に言うと、村人からは良くは思われていないのかもしれません。ただ、アンカ叔母さんは人望の厚い人だとマリカに語っていた。
う~ん、謎だ。
復讐をしても気持ちは張れないような気がする
クリスティナはガンツへの復讐を果たしたが、スカッとした気分にはならなかった。
クリスティナ自身もスッキリとした表情ではなかったし。
おそらく、レイプされた心の傷やヤナを亡くしてしまった悲しみは今後も続くのだろう。
救いの無さを感じるのだが、そういったこともこの映画のテーマになっているのだろうか。
クリスティナはガンツに復讐してからどうするつもりだったのか?
レイプされたことと昏睡状態にさせられた双子の姉妹ヤナの復讐をするために地元に帰ってきたクリスティナ。
物語ではマリカと取引をしたことで自身が殺人の容疑者になることはありませんでしたが、そうでなければ復讐した後はどうするつもりだったのでしょうか?
クリスティナは、ガンツを殺害した後に逃亡者としてしぶとく生きていくようなタイプには見えませんでした。
また、笑顔のシーンが少なく暗い表情が多かったので、もしかしたら復讐をした後は自死するつもりだったのかな?なんて思いました。
でも、取引をしてマリカが殺人の罪を被ってくれたので、今後クリスティナが自死を考えることはないでしょう。
マリカの逃亡後はクリスティナと合流するのか?
マリカはクリスティナのパスポート(身分証?)を使って隣国に逃亡しました。(パスポートの名前にクリスティナと書かれていました)
クリスティナのパスポート(身分証?)はマリカに盗まれたということになっています。
クリスティナは自身の身分証を再発行してもらってから隣国に脱出してマリカと合流するのでしょうか?それとも、元の生活に戻るのでしょうか?
私は、二人が再会することはもうないのだろう、という気がしました。
マリカが脱出した国はセルビア?
ラストでマリカが国境ゲートを通過するシーンがありますが、この国境ゲートをグーグルマップで探してみると、北マケドニアとセルビアの国境に同じと思われる国境ゲートを見つけました。
国境ゲートの屋根の形状や詰所の窓ガラスの形状など、おそらく撮影場所はここだと思われます。
https://www.google.com/maps/place/Border+crossing+Tabanovce/@42.2349731,21.7038238,3a,75y,90t/data=!3m8!1e2!3m6!1sAF1QipNdq2hCSq_GS7bVwRS6i5oPz4o8YkYHQfavwbCw!2e10!3e12!6shttps:%2F%2Flh5.googleusercontent.com%2Fp%2FAF1QipNdq2hCSq_GS7bVwRS6i5oPz4o8YkYHQfavwbCw%3Dw141-h86-k-no!7i3612!8i2198!4m5!3m4!1s0x135457dba3993e87:0x99f89fb21db3a372!8m2!3d42.2349731!4d21.7038238?hl=ja
なお、撮影場所は北マケドニアとセルビアの国境だと思われますが、物語としてマリカがセルビアに逃亡したのかは不明です。
マリカのその後
クリスティナのパスポート(身分証?)は、隣国にも手配されるでしょうからすぐに使えなくなるでしょう。
しばらく生活できるだけの現金はありますが、その後はどうやって生きていくのかが心配ですね。
だって、身分証もないのに部屋を借りたり仕事をすることができるのでしょうか?
ホテルなどを転々としながら、また娼婦になるのでしょうか??
列車内でマリカは母親のところに行くと言っておりましたが、隣国に出てしまったので母親とは永遠に会えないかもですね。
やっぱり、一人で生きていくのかな…という感じがします。
それでも、森の外れで一人で生活していたアンカ叔母さんのように逞しく生きていってほしいです。