映画「THE GUILTY/ギルティ」を見て
更新日: 2022-05-06 20:30:16
映画「THE GUILTY/ギルティ」
2018年 1時間28分
原題「THE GUILTY」
自動翻訳すると「有罪」
誘拐された女性からの緊急ダイヤルを受けたアスガーは独自に解決を試みるものの事件は予想外の展開に…。
感想
おそらくアスガーは、自身が犯した罪について偽証をして逃れるか、それとも罪を認めるかで悩んで苦しんでいたのだろう。(それは相棒の警察官も同じ様子だった)
そんな時に掛かってきた緊急通報を通して元夫のミケルに投降を勧めたり、自殺をするかもしれない奥さんを思い留まらせたりしたが、それらの言葉はそのまま自分に跳ね返ってきたのだと思う。
だから最後は、やっぱり自分に正直になろうと罪を認める気持ちになったのではないだろうか。
アスガーには逃げずに罪に向き合ってほしいと思った。
自業自得
冒頭で2件の緊急通報があり、1件は薬物で混乱した男性からの通報で、もう1件は車上強盗の被害者からの通報だった。
この2件の通報の際、アスガーは「自業自得」という言葉を使っていた。
アスガーの中には、罪を認めるべきという気持ちと偽証をして逃げ切ろうとする気持ちで葛藤しており、後者のアスガーは「撃たれた少年は自業自得であり、自分は悪くない」と自分に言い聞かせて自身を正当化しようとしていたのだと思う。
だから、通報を受けた際に「自業自得」という言葉が出たのではないだろうか。
予想外のストーリー展開
音声のみで犯人を追い詰めていくストーリーなのかと思いきや、そうではなくて、犯人と思われた夫は妻を助けたかっただけだったし、被害者と思われた妻が故意ではないものの犯人であった。
さらにアスガーが職務中に殺人を犯していたことが明らかになるなどよく練られたストーリー展開。
映像が最初から最後までずっと緊急通報を受け付ける警察の指令所だけだったというのもすごいかも。
アスガーは、なぜ独断で捜査したのか?
ミケルの自宅を相棒に調べさせたり、サイドブレーキを引いて車を急停車するようイーベンに指示したり、ミケルをレンガで殴れと指示したり、明らかに職務の範囲を超えていると思う。
でも、それは、明日の裁判について仕事をして忘れたかったという気持ちもあったのかな。
他にも、イーベンを救うことで少年を殺してしまったという罪悪感を薄めたり、少しは罪滅ぼしのためになると考えたのかもしれない。
社会に助けを求めること
元夫のミケルは、イーベンを救おうと医者、自治体、弁護士に助けを求めたが、それでも悲劇を防ぐことはできなかった。
社会に助けを求めたのに悲劇が防げなかったというのは問題だ。
精神疾患が原因とはいえ母親であるイーベンに殺されてしまったオリバーについて、ミケルは電話の向こうで泣き崩れていたが、その声を聞いていたアスガーは、自身が殺してしまった少年の親の声を想像したのかもしれない。
アスガーは、なぜ少年を殺してしまったのか?
アスガーが職務中に19歳の少年を殺してしまったことについて「人生にウンザリして何かを取り除きたかったから」と語っている。
ウンザリとは、出て行ってしまった奥さんのことを指しているのだろうか?
カウンセラーも受けているようだし、精神的に疲れていたことが事件に繋がってしまったのだろうか?
一方で、ついかっとなって物を壊したりするのは、よろしくないと思う。
あんな感じでついかっとなって少年を殺してしまったのだろうか?
アスガーというのは、良い警察官でもあるし、悪い警察官でもある。
緊急通報にしても、誘拐の件は一生懸命だったのに、その他の緊急性の低いと思われる通報は、タクシーを呼べとか、忙しいとかいって切ってしまっていたし。
誰でもそうなんだろうけど、人というのはたくさんの顔があるものだ。
アスガーは、なぜ罪を認める気になったのか?
アスガーは自身が犯した罪について、どうするべきか悩んでいる様子だった。
しかし、この誘拐事件を通じて気持ちが変化したのだろう。
その理由にはいくつかあって、一つは緊急ダイヤルを通じてアスガーが語ったことが自分自身に跳ね返ってきて自分に嘘をつくことが辛くて耐えられなくなったこと。
それにマチルデのこともある。マチルデは6歳という幼さで弟オリバーの死体を見てしまった。おそらく、もう両親と一緒に暮らすことはできないだろう。
すると、施設で暮らすことになるか、里子に出されるのかもしれない。それでも生きていくマチルデのことを思えば、自分だけが逃げるという選択肢は有り得なくて、生きて罪を償うべきだと影響されたと思う。
他にも泣き崩れるミケルの声は、アスガーが殺してしまった少年の親の声に聞こえたかもしれないし、嫌というほど人の苦しみを味わわされたのではないだろうか。
この事件を通して警察官としてのあるべき姿を取り戻したのかもしれない。
この作品の構図
結局のところ、アスガーが緊急ダイヤルを通じて語ったことは、自分自身に語りかけているという構図にもなっているのだろう。
ラストで誰に電話を掛けたのか?
ラストで一人で廊下に出たアスガーは手に掴んだものを頭に向けていたが、最初はそれが銃だと思ったが、良く見てみると携帯電話だった。
では、誰に電話を掛けたのだろうか?出て行ってしまった奥さんだろうか?
おそらく、アスガーは裁判で罪を認めると思う。
奥さんにそのことを伝えたかったのだろうか?
刑務所に入れば、すぐには出てこれないだろうし、よりを戻して出所するまで待っていてほしいとも言えないだろう。
だから、出て行った妻に自分が犯した事件の真相と別れを伝えたのかもしれない。
教訓
やはり、困った時は自分一人で背負わずに社会に助けを求めるべき。そうしないと自分にとっても社会にとっても最悪の結果になってしまうので。