映画「ブルー・リベンジ」を見て
更新日: 2022-05-15 07:59:09
映画「ブルー・リベンジ」を見て
2013年 1時間30分
復讐のために殺人を犯すホームレスのドワイトであったが、それが報復合戦に発展してしまい…。
原題「Blue Ruin」
自動翻訳すると「青い廃墟」
Ruin には「破滅させる」「没落させる」「打ち滅ぼす」という意味もあるらしい。また、Blue には「陰欝」という意味もあるとのことなので「Blue Ruin」とは「沈んだ気分での復讐」「静かな復讐」という意味かもしれない。
それに加えて、ドワイト自身が復讐によって破滅するという意味も込められているかもしれない。
それとも、そうではなくて「Blue Ruin」とは「青い廃墟」という意味で、ドワイトが乗っていた廃車寸前の青い車のことを指しているのだろうか?
感想
復讐するべきか?ということを考えさせられる作品だった。
映画「湿地」では「世代を超えて受け継がれる負の遺産」という言葉があって、親のしたことが子供に影響して悲劇が起きたけど、この作品もその点が同じだ。
そして、死をもって悲劇の連鎖を終わらせるという点も。
ドワイトの車の弾痕
冒頭のシーンでドワイトの車がアップで映し出されますが、その錆びたボディーに複数の弾痕が確認できます。
これは両親が殺された時の弾痕なのでしょう。
広い範囲に渡って複数個所に穴が開いているので、もしかしたら機関銃を乱射されたのかもしれません。
この車をドワイトは住居として使っていますが、殺された両親との思い出が詰まった大切な車でもあるのでしょう。
ドワイトがホームレスをしている場所
冒頭のシーンで、ホームレスのドワイトが夜の遊園地で残飯を漁っていましたが、その遊園地について調べてみると、アメリカ合衆国デラウェア州にある「ファンランド」という遊園地であることがわかりました。
ドワイトがゴミ袋の中からチケットを拾っていましたが、そのチケットには「ファンランド」と印刷されていたので間違いないはずです。
グーグルのストリートビューでも確認してみましたが、一列に配置されている夜店や遊園地の乗り物など作品内の映像と同じでした。
ファーストフード店でサムがデラウェアについて「たまには行かなきゃね、家族行事だもの」と語っていましたが、おそらくドワイト一家は定期的にデラウェア州に家族旅行などで出掛けていたのでしょう。
殺された両親との楽しかった思い出があるデラウェア州だからこそ、ドワイトはそこで生活をしているのかもしれません。
なぜホームレスになったのか?
ドワイトはホームレスとなって車上で生活しているが、それはなぜなんだろう?
両親を殺されてしまったことに何か関係があるのだろうか?
しかし、ドワイトの姉であるサム・エヴァンズはベビーシッターを雇えるほどの暮らしぶりだったので、ドワイトだけがホームレスになるのは不自然だ。
また、ドワイトは他人の住居に無断で侵入して風呂を拝借したり車上荒らしをしたりと行動力のある人間であるが、それだけの行動力があるのならホームレスから脱出することが出来るような気もするが、そうしないということはホームレス生活が気に入っているのだろうか?
冒頭でドワイトを迎えに来た女性警察官はドワイトの名前も知っていたし、彼の両親が殺されたことや、ホームレスで生活している場所も知っていた。
おそらく、日頃から声を掛けるなどして面識があったのだと思うが、だとすれば行政からの支援を警察官から提案されることもあったはずだ。
それでも、ドワイトがホームレスを続けているのだとすると、ドワイトは両親が殺されたことで人間が嫌いになってしまい、その結果としてホームレスを選択しているのだろうか?
警察署の前に置かれていたという書類はサム姉さんが置いたのか?
女性警察官は「署の前に こんな物が」と言って、警察署の前に置かれていたという書類のような紙をドワイトに差し出した。
この書類のような紙について、最初は新聞かと思ったが、それにしては薄かったので、あの書類のような紙はウェイドが釈放されることを通知する書類だったのだろう。
また「署の前に こんな物が」ということは、その紙は誰かが意図的に置いたものなのだろう。
では、誰が何の目的で警察署の前に釈放の通知書を置いたのか?
もしかしたら、釈放の通知書を警察署の前に置いた人物というのは、ドワイトの姉であるサムではないだろうか?
サムとドワイトがファーストフード店で会話をしているシーンで「デラウェアは?」と聞くサムに対して「知ってたの?」とドワイトが返した。
デラウェアとは冒頭でドワイトがホームレス生活をしている場所である。
ファーストフード店でも「お金に困っているの?」と聞いていたし、おそらくサムはドワイトがデラウェア州でホームレスをしていることを知っていたのではないだろうか。
で、サムはこっそりと警察署の前に釈放の通知書を置き、その通知書がドワイトに渡ることを期待した。
もし、ドワイトに釈放の通知書が渡れば、ドワイトが復讐をするだろうと考えたのではないだろうか?
ファーストフード店でサムは「苦しませて殺したか?」とドワイトに聞いていたので、ウェイドに憎しみを感じていたはず。
それにウェイド家の車を見かける度に「頭に来る」といった発言もしていたので、常日頃から彼らに対する怒りを抱いていた可能性が高い。
サムは自身の手を汚さずにホームレスとなった弟のドワイトに復讐の役目を負わせたのだろうか?
司法取引とはどんな内容だったのか?
刑務所から釈放されたウェイドについて、新聞の記事には「93年の司法取引で釈放」と書かれていた。
この司法取引とはどんな内容だったのでしょうか?
ドワイトの両親を殺害した罪とはまったく関係のない犯罪について、何らかの情報を提供して減刑してもらったのかな?
ドワイトは、なぜベンの車からバッテリーを持ち去ったのか?
ドワイトがテディに撃たれそうになった時にベンが助けてくれたが、今度は一人でケリをつけるため、ベンが付いて来れないようにした?
ドワイトは、なぜ少年が自分の父の子だとわかったのか?
ウェイド家で待ち構えている時に彼らのアルバムを見ていたが、そのアルバムを見て何か気づいたのか?
復讐するのは正解なのか?
この作品のようにやったらやり返すという考え方を双方が持っていると、何世代にも渡って復讐が続くことになる。
それは双方にとって不幸だ。だから、どこかで終わらせなければならない。
犯罪被害者になったことがないので、ドワイトの苦しみがどれほどのものであったか私にはわからないけど、復讐した後も生きていくつもりなのであれば、復讐はしない方がいいと思う。
なぜなら、復讐して気持ちが晴れるとは限らないし、警察から逃げ切るのも難しいし、逃げ切れたとしてもいつ捕まるかビクビクしながら生きなければならないから。
理想的には、憎しみや憎き相手のことを忘れて、自分自身が幸せになることではないかと思う。
とはいえ、一方的にやられても復讐しないで普通に生活を続けるのは、それはそれで辛いんだろうけど…。
加害者に重い刑罰が下されることを復讐の代わりとして考えるしかないのかな?
もし、どうしても自分の気持ちを抑えられなくて復讐をするのであれば、その時は自分の命を含めて全てを投げ出してでも復讐をしたいと考える時だけではないだろうか。
ドワイトの復讐
ドワイトの場合は、ウェイドが司法取引で刑期が短くなったことと、自身がホームレスで失うものが何もないという状況だったので、復讐しないという選択肢がなかったのかもしれない。
だけど、そもそもドワイトの両親が殺されたのは、ドワイトの父とビッグ・ウェイドの妻が浮気をしたことが原因であり、ことの発端はドワイトの父親にあるんだよなあ。
それに、両親を殺したのは、ウェイドの父親であるビッグ・ウェイドだったことが明らかになると、ビッグ・ウェイドの息子らを殺すのは復讐というよりも姉が襲われるのを守るためということになってしまい、何だかおかしな方向になってしまった。
しかも、ドワイト自身も死んでしまった。
なので、結果として誰も幸せにならなかったし、復讐というよりも破滅になってしまった。
サム姉さんは復讐についてどう思っているのか?
気になるのは、サム姉さんのことだ。
ウェイドの釈放を通知する文書を警察署の前に置いたのがサム姉さんだとすると、ウェイドに復讐することを望んでいたはずだから、気持ちとしては一区切りついたかもしれない。
おまけにウェイドの一家は少年以外の全員が死亡したので、今後サム自身が危険な目に遭遇する可能性も無くなった。
では、ドワイトが死んだことを知ったら悲しむのだろうか?
しかし、泣くくらいにドワイトのことを思っていたのであれば、そもそも復讐という危険な行為をドワイトにさせることはないように思う…。
すべてサム姉さんの目論見通り、あるいはそれ以上の結果になったということだろうか??