湊かなえ 短編集「サファイア」より「ルビー」を読んで
更新日: 2022-01-10 10:22:02
湊かなえさんの短編集「サファイア」より「ルビー」を読みました。
おいちゃんとの交流
何気ない挨拶やちょっとした会話しかないけど、ほどよい距離感があってなんだか楽しそう。こういった些細な心の交流が幸せというものなのだろうか?
お母さんの人柄がいい
「おーい、おーい、お嬢さん」
おいちゃんから「お嬢さん」と声を掛けられ、それが自分の事だと思って振り返るお母さん。人柄が滲み出ていて、思わず「ふふふ…」と笑ってしまった。
「おいちゃん、おはようございます」
ある朝、母はうっかり、本人に向かって「おいちゃん」と呼んでしまった。
このシーンもクスッと笑ってしまいました。すごくいいお母さんって感じ。
おいちゃんは、元殺人犯
あんなに優しそうなおじいさんだが、実は、妻を殺した元殺人犯…。
おいちゃんの気持ちもわかる。だって、妻にプレゼントしたはずのブローチが秘書の鞄から出てきたが、それは妻が秘書に託したからであろう。つまり、妻はそれだけ秘書の事を信頼し、愛していた。
さらに、おいちゃんが妻に切り掛かろうとした時、秘書は自分の体を盾にして奥さんを守ろうとした。秘書の気持ちも本気だったってことですね。
おいちゃんとしては、どうしても許せなかったのでしょう。
プレゼントのブローチは一億円!
おいちゃんのお金の使い方
おいちゃんは自分の気持ちを金額に反映して感謝の気持ちを表現しているのかもしれないけど、受け取った方としてはちょっと困りますよね。例えば、高額なプレゼントを貰ったら、その後も対等に付き合っていけるのだろうか?
だから奥さんに逃げられた?
おいちゃんは、妻に対しても定期的に高額なプレゼントを贈っていたのでしょう。それは悪い事ではないかもしれないが、奥さんからしてみると、金銭で縛られているというかそんな愛され方が嫌になって、気持ちが離れていったのかもしれない。
ジョージ・クルーニーのエピソードが頭に浮かんだ
俳優のジョージ・クルーニーさんは、14人の友人にそれぞれ100万ドル(約1億円)をプレゼントしたそうだ。それだけ大切な存在だからプレゼントしたのだろうが、渡された方は何の迷いもなく受け取ったのだろうか?そして、その後も対等な友人として付き合っているのだろうか?
自分ならどうするか?
もし、自分が同じ立場なら……たぶん受け取っちゃうかな。でも、お守りみたいにしてずっと取っておく。使わないけど「使おうと思えばいつでも使える」っていう状態を長く楽しむ感じですかね。
姉妹の頭に浮かんだ風景とはどんなだったか?
ただ、私たちの頭の中に、今、同じ風景が浮かんでいることは確かなのではないかと思う。
これって、どんな風景なのだろうか??島の長閑な風景??
さすがにブローチを換金して何を買おうかなんてことは考えてないですよね。(しかも、ブローチはお母さんの所有物だし)。
お母さんに本当の事を言っても、お母さんを困らせるだけになりそうだから、おそらく、両親にもずっと内緒にしておくのかな。
(あるいは、ブローチが行方不明になって、姉妹の金使いが荒くなった…というラストもアリかもしれません)
でも、ワクワクして眠れないんだろうなあ~(笑)
このワクワクした気持ちを楽しんでいるうちが一番幸せかもしれない。
お金で買える幸せと、買えない幸せ
お金はあっても幸せが手に入らなかったおいちゃん。お金は無いかもしれないが仲良く幸せに暮らしている家族。
おいちゃんは、窓の下で暮らしているあの家族を眺めながら、家族の一員になった気持ちでいたのではないだろうか。だとしたら、人生の最後に心の交流ができて良かったですね。