江戸川乱歩「悪霊」を読んで
更新日: 2022-02-27 08:07:04
不可解な殺人事件?が発生し、さらに次の殺人が予言されたところで、ハイ、おしまい!えええ~、ここで終わり??続きは読者自身で想像しろってこと?それとも、熟読すれば真相に辿り着くってこと??
訳が分からないのでググってみると「良い結末がどうしても思い浮かばなかったので、未完のまま連載を終了する事にした」とのこと…。だとしたら、その連載誌以外でこの作品を扱うのであれば「未完の作品」である事を最初に書いておいてよ…とも思う。
せっかく読んだのだから、ちょっとだけ考えてみた
…とはいえ、真相は永遠に謎のままですが。
犯人は、姉崎曽恵子の日々の行動について詳しく知る事ができる人物?
姉崎曽恵子は4人で暮らしているが、犯行推定時刻である昼過ぎから午後4時半までは一人であったとされている。そして、その時間帯に姉崎曽恵子が一人で在宅している事を犯人は前もって知っていたのではないかと思う。なぜなら、普段は4人で暮らしているのに、偶然押し入ったらたまたま一人だったという可能性は低いと考えるからだ。また、あのような殺害方法には何か意味があり、その場の思いつきとは考えにくいからだ。
姉崎曽恵子以外の3人のうち、中学二年生の息子は学友と旅行に出かけており、書生は田舎に不幸があって帰郷中で、女中は買物を頼まれて遠方まで出掛けている。
思うに、女中が買物に行くよう指示されたのは、犯行日の朝か、せいぜい前日くらいではないだろうか?だとすると、犯人は、姉崎曽恵子の日々の行動や家の内部事情について、ほぼリアルタイムで知る事のできる人物という事になる。
あるいは他にも「姉崎曽恵子自身が意図的に一人になる時間を作ったのではないか?」「他殺ではなく自殺の可能性」「家の内部の者による犯行」などが頭に浮かんだ。
なぜ施錠したのか?
普通に考えれば、犯行後に施錠をするのは、部屋を密室にして自殺だと思わせる為の偽装工作である。しかし、この土蔵の扉は建物の外側から施錠する構造になっている。もし、自殺に見せかけるのであれば、全裸にするのは不自然だし、施錠するのも不自然だ。(内側から施錠する事ができないから)。
だとすると、施錠をしたのは事件の発覚を遅らせる為だろうか??
事件の発覚を遅らせる為に姉崎曽恵子を無理やり土蔵に連れて行ったとすれば、姉崎曽恵子が裸足で家を出た理由の説明が付く。
しかし、犯人は姉崎曽恵子が一人でいる時間を知っていたと思うし、そうであれば、女中が夕方前に帰宅する事や午後5時に祖父江進一が訪ねて来るという事も知っていたのではないだろうか?だとすると「事件の発覚を遅らせる為」の工作だとすると、あまり意味のない行為とも思える。
遺体の下から鍵が発見されたのはなぜか?
鍵が遺体の下から発見されたというのもミステリーだ。鍵が一つしかないという事が事実であれば、第三者が鍵を掛けた後に土蔵の2階の窓へ放り込んだのでは?というのが頭に浮かんだ。しかし、この場合は、協力者がいる自殺という事になってしまう。
なぜ全裸にし、不可解な傷を付けたのか?
遺体には致命傷以外に6箇所の切り傷があり、その傷から流れた血はそれぞれ別の方向に流れていたわけですが、それは犯人と争った結果ではなく「体の向きを変えながら、一か所ずつ傷を付けて流血させた」と想像しました。では、なぜそのような事をする必要があったのでしょう?何かの儀式?あるいは何かの儀式であると見せかける為?
儀式だとすると、謎のマーク?が書かれた紙片が現場から見つかったというのもありましたし…。
事件が二日前に予言されていた点
心霊研究会の会合の際、黒川博士の奥さんが「二日前の晩に龍ちゃんが事件を予言していた」と発言している。本当に本物の予言であるならば、事件は「霊」だとか「非科学的な現象」で片づける事ができるが、そうなると何でも有りになってしまうので、その線は無いだろう。
本物の予言ではないと考えると、予言(発言)どおりに殺人を実行したか、事件後に予言していたと嘘を付いたかのどちらかという事になる。予言(発言)どおりに殺人を実行したのであれば、予言した龍ちゃんや黒川博士の奥さんが疑われる事になるが、果たして、そんな危険な事をするだろうか?
では、殺人事件が起きた事を知り「予言していた」という嘘をついたのか?例えば、龍ちゃんを有名にする為に??あるいは、心霊研究会を有名にする為に??
感想
事件の真相は読者の想像にお任せします!という作品があっても面白いかもしれないですね。例えば、映画で言うと「キューブ」や「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のように。
モヤモヤは残るかもしれないけど、各自が自由に想像する事ができるのは、それはそれで面白いと思う。また、人ごとに全く異なる解釈や感想になると思うので、その違いを知るのも面白いと思う。
あるいは、後半以降の展開を募集してみるのも面白いかもしれない。もしかしたら多くの読者を「なるほど!」と唸らせる人が現れるかもしれない。
誰か、この物語の続きを書いてくれないだろうか?もちろん、著者が残した複数の謎について、納得のいく結末に仕上げた作品をね。