名無しさん

江戸川乱歩「赤いカブトムシ」を読んで

公開日: 2022-02-17 01:48:33 (1286文字)
更新日: 2022-02-17 01:46:29
読書感想 江戸川乱歩 小説

江戸川乱歩 赤いカブトムシ

https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/card57105.html
青空文庫にて無料で読めます。

赤いカブトムシというタイトルから、どんな奇想天外な、あるいはグロや推理ものなのだろうかと読み始めたのですが、この作品はそのような作品ではなく、冒険要素の詰まった児童向けの短編小説でした。江戸川乱歩という作家は、こういった児童向けの作品も書いていたのですね。

青空文庫によると、初出:「たのしい三年生」講談社、1958(昭和33)年4月~1959(昭和34)年3月とあります。掲載期間が1年という事と、この作品が12の章で構成されている事、さらに各章の始まりに前の章のあらすじが書かれている事から、おそらく12回に分けて連載されたのでしょう。

ところで「赤いカブトムシ」が掲載し終えた翌月である 1959年4月 (63年前) は、どんな時代だったのでしょう?
https://www2.nhk.or.jp/archives/search/special/detail/?d=history008
NHK によると「テレビ放送が開始されてから6年目で、テレビの普及が200万台を超えた」とあります。※ カラー映像での放送は翌年の 1960年からであり、この時はまだ白黒(モノクロ)映像。

ほぼすべての家庭にテレビが普及するのは、それから10年後の1970年代なので、当時の子供達にとっては、こういった小説や漫画が娯楽の一つだったのでしょう。時代を感じます。

さて、作品の方はというと、まず最初にマンホールから人が出てくるという展開に興味をそそられました。江戸川乱歩らしい展開ですよね。しかし、黒いマントやハットなどという出で立ちに「あれっ?」と思ってしいました。これは子供向け作品なので仕方がないでしょう。

しかし、マンホールの中から這い上がって登場するという魔法博士の登場シーンがシュールです。マントやハットといった衣装を準備し、子供達がやってくるまでマンホールの中で待機していたのでしょうか。(笑)

また、赤いカブトムシを子供たちに隠させ、それを魔法博士が探し出すという知恵比べの対決では、魔法博士が子供達を尾行して赤いカブトムシの隠し場所を発見しました。でも、それって「知恵」は関係ないじゃないですか!(笑)

魔法博士の目的は、少年探偵団の勇気や知恵を試すためとの事ですが、その割には、地下に大掛かりな仕掛けを作ったり、もしかして洞窟も掘ったのでしょうか?とても一人でできるとは思えないので、工事業者に発注して、かなりの金額と日数を掛けないとできないのでは…と思ったり(笑)

そもそも、赤いルビーのカブトムシは本物のルビーなのでしょうか?だとしたら、魔法博士、めっちゃ金持ちですね。もし、風船に隠した赤いルビーのカブトムシが、風船ごとそのままどこかへ飛んで行ってしまったらどうするつもりだったのでしょうか。(笑)

それだけの大金を掛けて子供達を楽しませたのだから、魔法博士って、めちゃくちゃいいおじさんじゃないですか!(笑)

昭和の子供たちの娯楽に触れられる短編作品でした。


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