名無しさん

江戸川乱歩「日記帳」を読んで

公開日: 2021-10-26 19:02:30 (1157文字)
更新日: 2021-10-26 16:38:56
読書感想 江戸川乱歩 小説

https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/57190_58247.html
青空文庫より。10分くらいで読める短編小説。無料です。

若くして病気で亡くなった弟の日記帳を読み耽る兄は、ある事実を知ってしまうというお話。表題にもなっているその日記帳にいったい何が書かれているのか興味を引かれます。しかも江戸川乱歩の作品だし。

暗号の解読
日記帳を読み、雪枝に対する弟の恋心を感じ取った兄。弟は雪枝に8回葉書を送っており、その送った日にちが暗号となっているわけだが、果たしてそれが暗号であることに気付くものでしょうかね?ちょっと無理があるのでは、と思っちゃいました。

ラスト数行で物語の印象がガラリと変わる
雪枝から送られてきた葉書の切手が斜めに張ってある事から、雪枝も弟に好意があったのだと兄は見破る。(これは、当時の雑誌で紹介された方法であり、知られた方法だったらしい)。この作品は弟の無念と実は両想いだったという事実を知った兄のお話なのだなと思ったが、実は、雪枝と兄は2か月前に婚約したばかりだったのだ!

どんでん返しの後にどんでん返しという展開。果たして兄はその事実を知らない方が良かったのか、それとも知って良かったのか悩む事だろう。

内気な性格の弟の失恋や無念さを描いた作品が、最後の数行でまったく違った印象になるのは、さすが江戸川乱歩といったところ。

弟が恋した雪枝
雪枝は、兄と弟の二人を同時に好きになっていたのだろうか?

一つの推測
例えば、婚約した兄を困らせてやろうと、弟が偽の日記と葉書を工作していたとしたら?......んなわけないっか。

弟は何に失望したのか?
もしもふられてしまったらという恐怖から恋文を暗号にすることでしか自分の気持ちを伝えられなかったという弟の行動は理解できる。しかし、 雪枝が暗号を解読した可能性は極めて低いのでは? と思った。

雪枝から返事が返ってくるということは、暗号に気付いていないか、気づいた上で返事をくれたかのどちらかなので、失望する必要はないように思うのだが...なので、今の段階で失恋したと判断するのはおかしいというかまだ早いと思った。

それとも、弟は「雪枝は暗号を解読したが、お断りという意味で絵葉書を送って来た」と考えたのか?

「最後の通信に対してYより絵葉書来る。失望。おれはあんまり臆病すぎた。今になってはもう取返しがつかぬ。ああ」

この一文を読んだ時「臆病にならずにハッキリと気持ちを伝えていれば、うまくいっていたかもしれない」という意味に感じた。そうだとすると、弟がそう思った理由は何だったのでしょう?例えば、雪枝と兄が交際している事を知ってしまったとかでしょうか?

...う~ん、でもまあ、弟としては失恋したと感じたということなのでしょう。


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