名無しさん

江戸川乱歩「幽霊」を読んで

公開日: 2022-03-06 16:26:50 (2069文字)
更新日: 2022-03-06 16:26:33
読書感想 江戸川乱歩 小説

江戸川乱歩 幽霊

https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/card57196.html
青空文庫で無料で読めます。(12,270文字)

平田氏を殺そうとしていた辻堂氏が病気で亡くなった。ところが、亡くなったはずの辻堂氏から「幽霊になって復讐してやる」という脅迫文が届き、本当に辻堂氏を目撃してしまう。さて、どういう事なのか?というお話です。

目次

感想

最後まで読んだ感想は、ビックリ感はあまりなく、ああ、なるほどね、って感じ。

その理由は「死んだ人間がどうやって現れたのか?」という驚きのトリックを期待したのに「実は生きていた」という期待外れの展開と、何の伏線もないのにいきなり「郵便配達員」だったことが明かされたからだと思う。

青年の正体

砂浜で平田氏を助けてくれた青年は、なんと「名探偵・明智小五郎」でした!

平田氏に会った瞬間に何かあると感じたのは、探偵の「勘」ってやつでしょうか?

ところで、明智小五郎は何の目的で海辺の旅館に滞在していたのかが謎ですね。バカンスでしょうか?

私の予想

役所から取り寄せた戸籍謄本を偽造する事は不可能だと思ったし、辻堂氏の葬式も行われたことから、辻堂氏は間違いなく死亡しているのだと考えてしまいました。

なので、私が想像したのは、辻堂氏は双子であり、残された兄弟が意思を継いで復讐しようとした、というものです。

辻堂氏からの手紙については、双子の兄弟が筆跡を真似て書いたか、辻堂氏本人が生前に書いたものだと想像しました。手紙さえ用意できれば、あとは投函するだけで完了です。

辻堂氏の幽霊が写り込んだ写真については、平田氏の内部に犯人の協力者がいたのでないかと考えました。なので、平田邸に郵送されてきた加工前の写真を、協力者がこっそりと双子の兄弟に渡したのだと想像しました。その後、双子の兄弟が写真を加工し、再度投函すればよいわけです。

辻堂氏からの電話については、兄弟なのだから声が似ていても不思議ではない、あるいは、生前に録音しておいた音声を使った、と想像しました。

平田氏が出向いた先に幽霊が出現する事ができた理由は、協力者が情報を漏らしていて、その情報をもとに先回りしていた、というものです。

辻堂氏は死んだはず、という思い込み

一度誤った判断を下すと仲々間違いに気がつかぬものですよ。

上記は明智小五郎のセリフです。このセリフにもあるように「○○は○○だ」と、一旦自分の中で決めつけてしまうと、それを覆えして考えてみる事に気付かないという事です。

例えば「辻堂氏は死んだはず」という思い込み。私もそう思い込んでしまいました。平田氏の部下が「辻堂の奴、とうとう死にましたよ」と発言しており、葬式も行われました。しかし、平田氏の部下が嘘や間違った事を言っている可能性も考えられたわけです。

とはいえ…

平田氏は念の為に自身で辻堂の住いの近所へ出掛けて行って、それとなく様子を探って見た。
そして、腹心のものの報告が間違っていなかったことを確めることが出来た。

上記は、辻堂氏が本当に死亡したのかを確かめる為に、平田氏自身がわざわざ様子を伺いに行った際の発言です。これを読むと、誰もが「死んだのは間違いないだろう」と思ってしまうのではないだろうか?…とも、思いました。

辻堂氏は寝たきりの病人、という思い込み

以前から、彼が病気で床についた切りだということは聞いていたのだけれど

辻堂氏は死亡を偽装した後も郵便配達員として仕事をしていたわけですから、「寝たきり」というのは事実ではないという事になります。

上記の引用では「(辻堂氏が)寝たきりの病人」であると書かれておりますが、「聞いていた」というだけで、事実ではなかったわけです。「辻堂氏が寝たきり」であるという情報は、辻堂氏の偽装工作によるものだったのでしょう。

でもあれですね。辻堂氏が寝たきりの病人なのに、平田氏はなぜあれほど厳重に身辺を警戒していたのかが謎ですね。

辻堂氏が郵便配達員という点が腑に落ちない

あの半狂乱の辻堂老人ばかりは

平田氏と辻堂氏は面識があるわけだし「老人」かどうかを見誤るなんて事はないと思います。つまり辻堂氏が「老人」というのは「思い込み」ではなく「事実」だと思うのです。それなのに、辻堂氏が「郵便配達員」であるというのはちょっとズルいと思いました。だって、老人なら、現役を引退しているはずでしょう?

平田氏が辻堂氏の職業を知らなかったのは不自然ではないか?

平田氏は自宅の警備を厳重にし、辻堂氏の自宅も見張らせるという完璧な体制を築いていた。それなのに、辻堂氏が「郵便配達員」である事を知らなかったというのは不自然だと思いました。しかも、変装していたかもしれないとはいえ、平田邸の配達を担当していたのですから。

そもそも

そもそも、平田氏の郵便物を盗み見する事ができるのであれば、わざわざ葬式を出して死んだことにしなくても、平田氏の出先で殺害する事が可能だったのではないだろうか?それとも、死んだことにして、精神的な恐怖でジワジワと追い詰めるつもりだったのだろうか?


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