名無しさん

江戸川乱歩「人間椅子」を読んで

公開日: 2021-07-08 00:47:36 (1106文字)
更新日: 2021-07-19 08:27:16
読書感想 江戸川乱歩 小説
外務省書記官夫人である佳子は、美しい閨秀作家としても知られていた。そんな佳子のもとへ、突然ある男から原稿が送られてきた。その原稿には何が書かれていたろうか?…彼女がいま腰をおろしている書斎のイスのなかに、彼女をひそかに恋する男がひそみかくれている!肝を冷やす“人間椅子”の秘密はここに明かされた!
あらすじ より引用

文庫本で30ページほどの短編ですが、凄い発想力と想像力。普段から愛用している「椅子」の中に見ず知らずの男が潜んでいるなんて、ゾッとします!特に、女性からしたら、気持ち悪いし、変態の極みですよね。

告白文を読み終えた頃、タイミングよく新たな手紙が届き、実は「今読んでいただいた告白文は創作でした」というオチなのだが。。。

告白文は、本当に「創作」なのだろうか?
告白文の中に椅子を購入する過程が書かれているという事は、告白文の内容は創作ではなく、その事実を知っている者によって書かれたことになる。なので、告白文を書いた男は実在するのだろうと考えた。そして、もしも、目印のハンカチが窓に掛かっていたらそのまま夫人に会いに行き、ハンカチが掛かっていなかったら、第二の手紙で創作という事にしてしまうという男のアイデアだったのかもしれません。

新たな手紙が届くタイミングが良すぎるのは偶然か?
告白文はその日の朝に届いたものですよね?そして告白文を読み終えた直後にタイミングよく次の手紙が届くわけですが、そんな短時間のうちに新たな郵便物が届くなんて不自然です。だとすると、2通目の手紙は、屋敷の外で待機していた「男」が郵便配達人に成りすまして、女中に託したのでしょうか?

それとも、「男」なんて始めから存在してなくて、告白文も手紙も女中が書いたものなのでしょうか?だとしたら、何の目的で?作家として有名になっていく夫人への嫉妬からいたずら心で脅かしてみたって感じでしょうか??"女中の私にだって文章が書けるのよ!"ってところを夫人に見せつけたかったのでしょうか?

翌日に手紙が届いても物語として不自然ではないし(むしろそっちのほうが自然)、敢えてタイミングよく次の手紙が届くと乱歩が書いたとすると、それは何か重要なヒントなのでしょうか?

でもやっぱり「男」は実在した、ってことにしたいな。。。
自身を「生まれつき醜い容貌」であると告白する男。それは奇形児として生まれてきたのだろうと想像しました。他人と関わる事を恐れ、仕事はしているもののそれ以外は孤独に生きてきたのでしょう。本当はごく普通に人と関わりたかった。しかし、それができなかった。。。自身が「椅子」になることでしか人と接する事ができなかった男。。。そう思うと、哀しい話でもありますね。

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