名無しさん

江戸川乱歩「盗難」を読んで

公開日: 2022-03-06 11:08:37 (1899文字)
読書感想 江戸川乱歩 小説

江戸川乱歩 盗難

https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/card57189.html
青空文庫にて無料で読めます。(12,532文字)

目次

あらすじ

物語の語り手である「男」が勤める宗教施設に「寄附金を頂戴する」という予告状が届き、予告どおりに寄付金が奪われてしまう…。それから二か月ほど経ったある日のこと、所用でY町に来ていた語り手の男は、偶然にも犯人とおぼしき男を発見し、後をつけるのですが―――。

私が想像した真相

この短編作品は、事件の真相を明確にしないまま終わるのですが、私は以下のように想像しました。

事件の前に、警官を装った犯人が訪ねてきた理由

宗教施設に予告状を届けた後、警察に通報されては困ります。そこで犯人は、宗教施設周辺で人の出入りを監視し、警察への通報を阻止しようとしたのでしょう。

どのようにして阻止するのかというと、犯人自身が警察官に成りすまして対応するのです。しかし、日中に警察の制服でウロウロしていては目立ち過ぎてしまいますし、本物の警察官に見つかってしまう恐れもあります。

そこで犯人は、事件の4、5日前に警察官を装って宗教施設を訪問し、自身の顔を覚えさせたのでしょう。顔さえ覚えてもらえれば、もう警察官の格好をする必要はないわけです。ですから、道でばったり遭遇した際、犯人は私服であったと思います。普通なら顔を覚えられては困るはずなのに、随分と大胆な行動ですが、それだけ自分の犯行計画に自信があったのでしょう。

盗まれた寄附金は偽札ではなく本物だった

もしも、主任が偽札にすり替えていたとすると、犯人が捕まった場合「寄附金の着服」が発覚してしまう恐れがあります。それでも、自分は何も知らないと白を切るという手もありますが、証拠として偽札が発見されてしまえば、それも通用しません。

頭のいい主任がそんなリスクを冒すでしょうか?

また、予告状は犯行当日に届きましたが、その日のうちに偽札を用意する事も難しいのではないでしょうか?

このように考えると、盗まれた寄附金は偽札ではなく、本物だった可能性が高いと考えました。

偽札を掴まされたという事にしてその場を切り抜けた

盗難事件から二月ばかりも経過しているのに、未だに偽札を持ち歩いているものでしょうか?また、偽札だとしても、見間違えるほど精巧に出来ているのであれば、別々に仕舞っておくのが普通であり、ついうっかり本物の札を渡してしまうという事はないでしょう。そう考えると、偽札を掴まされたというのは、その場から逃れる為の嘘であると思いました。

犯人が逃走した後に現われた警察官は、本物の警察官だったと思う

先述のとおり、犯人が奪った寄付金は、偽札ではなく、本物であった可能性が高いと思います。だとすると、主任が警察署に行ってきたという話は本当という事になります。その際に「犯人が逃走した後に現われた警察官」にも顔を会わせているとのことから「犯人が逃走した後に現われた警察官」は、本物の警察官だったと思います。

ただし、本物の警察官ではあるものの、実は共犯者であったという可能性も捨てきれません…。

犯人が逃走した後に現われた警察官は共犯者なのか?

この人物は、本物の警察官だと思いますが、共犯者なのかどうかは悩むところですね。

共犯者という可能性

共犯者であれば、後日、犯人と一緒にいても何らおかしくないし自然です。

犯人は逃走時間を稼ぐ為、襖の隙間に銃をぶら下げ、犯人がまだそこにいると見せかけました。そうやって逃走時間を稼げるのは、せいぜい数分間ほどかもしれませんが、夜間なので逃げ切れるような気もします。

そうやって逃走時間を稼いだにも関わらず、それとは別に本物の警察官を共犯者として配置しておき、追手を足止めしようとしたのでしょうか?警察官によって足止めするという手口は、犯行日に犯人自身も行った方法なので、考えられなくはありません。

しかし、そこまで入念に準備をしなくてもいいような気がします…。

共犯者ではない可能性

犯人の逃走後に現れたのは偶然かもしれませんし、後日、犯人と一緒にいたのも、その男が犯人であるとは知らず、たまたま友人知人であったという事も考えらます。

とはいえ、偶然すぎるような気もしますが…。

主任と偽警官が共犯関係という可能性はないと思う

頭をよぎったのですが、これはないですかね。

主任は頭が良いので、寄付金を盗むとしたら独り占めする事を考えるし、それができる人物だと思います。それに、金が欲しければ、犯罪を犯さなくても信者から合法的に絞り取ればいいはずです。

そう考えると、主任と偽警官が共犯関係という可能性はないと思いました。


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