名無しさん

カズオ・イシグロ「日の名残り」(三日目 朝)を読んで

公開日: 2021-07-28 21:38:30 (1095文字)
更新日: 2021-08-04 19:41:29
読書感想 日の名残り 小説 カズオ・イシグロ
密かにジョークの練習を始めていたらしい
宿の1階にあるバーでジョークを試してみるものの、不発に終わってしまうスティーブンス。実は、ここ数か月の間、ジョークが言えるように練習する習慣を持ったとの事。地道に努力する姿には好感が持てます。

階下の宿主夫婦による夜遅くまでの騒音?
「二人で夜遅くまで仕事をしながら、女房ひっきりなしにしゃべりつづけておりましたし...」と表現されているが、これは夫婦の営みのことを濁しているのでしょうか?

銀の食器を磨き上げることで、少なからず歴史に影響を与えることができる。
銀の食器をピカピカに磨き上げ、その美しさを客人から褒められたと語るスティーブンス。とてもご機嫌な様子です。彼が言うように、たかが食器磨きかもしれないが、その食器の美しさによって機嫌が良くなる客人もいたわけで、(事実、客人からもダーリントン卿からも食器磨きについて褒められたことがある)、その結果、国際的に重要な会議がうまくまとまれば、それは会議の成功に少しは貢献できたことと同じだと。なるほど、たしかにそうですね。自分が歴史を変える瞬間に少しは影響を与えたとも言えるわけで、そこに執事の面白さ、やりがいを感じていたのかもしれない。先の章で、国際会議の話が長いと感じていたが、国際会議の成功に少なからず貢献したという気持ち(誇り)があるからで、それはスティーブンスの執事人生において、大きなウエイトを占める出来事だったのだろう。

執事の仕事
執事の仕事というのは、掃除をするとか、給仕をするとか、そういうことだけではなく、仕える主人や客人に対し、気分も良くなってもらうよう細心の注意を払っていないといけないようだ。

執事とは、生き方である。
スティーブンスの執事についての語りを聞いていると、執事というのは仕事ではなく、生き方である、と思えてきた。

不安?を感じるスティーブンス
ここ数か月、自身が起こした仕事での小さなミスについて、「人手不足以上の、何か得体の知れない原因から生じていると信じる理由は何もありません」、と語っているが、実は人手不足だけではなく、例えば自身にも「老い」が迫っていると心のどこかで感じているのかも??

ミス・ケントンからの手紙の解釈への不安
昨夜、スティーブンスは、ミス・ケントンからの手紙を読み返した。しかし、彼女がダーリントン・ホールに復帰したいと思わせるような具体的な記述はなく、自分がそのように勝手に解釈しているだけなのでは、と不安になってしまったようだ。


三日目 朝 ここで終わり。

続きは、 三日目 夜
https://nanashisan.net/p.php?id=owt45

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