名無しさん

カズオ・イシグロ「日の名残り」スティーブンスという人物について

公開日: 2021-10-13 19:43:39 (941文字)
更新日: 2021-10-13 19:42:09
読書感想 日の名残り 小説 カズオ・イシグロ

執事としては一流のスティーブンスだが、個人的な感情を表に出すということに関しては苦手な人だったようだ。つまりコミュニケーション能力が低い。そしてそれを「執事」という殻で隠しているように見えた。人と深く関わるという事に恐怖を感じていたのかもしれません。

なぜそうなったのかというと、父親が大きく影響しているように思う。作中でも、スティーブンスのお父さんは「自分はよい父親だっただろうか」という言葉を残して亡くなっているし。

父親は執事としては立派な人物だったのでしょう。しかし、スティーブンスと同じように人間的な面を表に出さない人物だったのでは?と想像しました。ですから、スティーブンスが幼い頃から親子のコミュニケーションが少なく、結果としてスティーブンスはあのような人間になってしまったのではないか?

父親のせいにするわけではないが、幼少期の家庭環境はその後の人生を大きく左右すると思う。

他にも、母親についての記述が一切ないことや、兄については戦死したという話に触れる程度だけというのも気になります。これは家族関係が希薄だったということも考えられますね。

悪く言えば殻に籠るような性格のスティーブンスにとって、自分自身を出す必要のない執事という仕事(生き方)は性に合っていたと思う。スティーブンスにとって、執事とは生きていく上での鎧だったのではないだろうか。本当の自分を隠す覆いのようなものだったのだろう。

物語の終盤でスティーブンスは涙を流していたが、結局のところ、彼はあのような生き方しかできないのだ。残念だけど、諦めるしかないと思う。だって、彼にとって、できないものはできないんだから。

そして、今後も大きく変わる事もないと思う。というより、変えられないと思う。

救いなのは、明日からジョークの練習を再開しようという彼の姿勢。ジョークの練習をするスティーブンスを笑う人がいるかもしれないが、彼は彼なりに前向きになっているのだから素直に応援したいと思う。

いつの日か執事を引退する時、スティーブンスはどうやって生きていくのか?

執事の給料は驚くほど低いようだし、蓄えもないようだが。。。年金や退職金のようなシステムはあるのでしょうか??家族は他界してしまったし、頼れる親戚とかいるのでしょうか??


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